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伏屋のづ

Author:伏屋のづ
Mail:nuderiff@gmail.com

書き殴った【おむつ・おもらしフェチ】系妄想置いてます
だいたい月一でもえないごみがふえるよ
文章も構成も壊滅的なんで重箱の隅突きなど歓迎中
萌えについて模索中なので作風も質もブレまくるよ

2016/01
>あいかわらずにほんご書けてねえ
>よかったら好きなシチュ語ってもらえるとうれしいです
@ごみばこ

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(書けたら書くかも)

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trash #018


 ――『香奈音はお姉ちゃんなんだから』って、なんで言われなきゃいけないんだろう。
 そりゃあ16才にもなれば親離れしてて当然だし、自覚なんて持ってるのが当たり前だ。
 わたし――日向香奈音(ひなた かなね)だって、そんなことくらい分かってる。でも……
(やっぱり、羨ましいよ。結音、ずるい……)
 学校から帰ってすぐの『ただいま』を言っても、返事が来ない家にいると――どうしても、心の中はもやもやしてしまう。
「びえええんっ! ふぎゃあっ、おぎゃあっ!」
「はいはい結音ちゃん、どうちたんでちゅかー? もしかして――やっぱり! ちっちでちゃってまちゅねー。おむちゅ気持ち悪かったねぇ」
 エプロン姿のお母さんは、わたしに気付く様子も無く、妹の結音(ゆの)のお世話ばっかりしていた。
 生まれてまだ一ヶ月の妹は、おっぱいも吸えばオムツにおもらしもする、まだ手のかかる赤ん坊だ。
 だから、仕方ない。頭ではそう、分かっているんだけど。
(返事ぐらいしたっていいじゃん……)
 結音につきっきりになっているお母さんを見ると、もやもやが止まらなくなった。
 理不尽だって分かってるんだ。でも……、気持ちは、わたしの理性なんて無視して勝手に沸いてきてしまう。
「ほらほら、結音ちゃんのしゅきなうさぎしゃんですよお。おもらしおむちゅはないないして、きれいきれいしまちょーねぇ」
「えぐっ、えうぅ……ふええぇぇん……」
 泣きじゃくる妹に対して、お母さんは実に手際よく、甲斐甲斐しく世話を焼く。オムツの交換なんてすごく丁寧で早いくらいだ。
 オムツ替え用の防水シートに結音を寝かせ、オムツ留めのテープをさっと剥がしていく。
 開かれた紙オムツは、たっぷりのおしっこを吸い取ってたぷんたぷんだ。それをくるくると巻き取りながら、ぷにっぷにの赤ちゃんの足を片手で高く持ち上げていく。
 それを支えたまま、もう片方がお漏らしに濡れた肌をウェットティッシュできれいに拭いていくのだ。
「あぷぅ……あぅ、うぅあうっ」
「あら、結音ちゃんも気持ちいいのかな? うふふ、そのままいい子でいてくだちゃいねぇ」
 濡れた肌を清められてる間は、泣くのが仕事の結音も流石におとなしくなるみたい。
 今泣いたばかりだってのに、目を細めて気持ちよさそうにしている。
(……いいなぁ)
 もやもやした気持ちの奥に、少しだけ切ない想いが入り混ざる。妹がかわいいから? それもあるけど、それだけじゃない気がする。
 何かはよく分からないけど――自分で、気持ちの正体を知る気にはなれなかった。
(そんなの……当たり前じゃん。結音は赤ちゃんで、お世話して貰えないといけないんだし)
 そんなわたしの迷いなんて誰にも届かないうちに、お母さんは結音のオムツ替えを終わらせていく。
 きれいに清められたお漏らしオムツの代わりは、カラフルな水玉模様の上に小さなうさぎのキャラクターが描かれた、とってもかわいい新品ふわふわの紙オムツだ。
 ちっちゃな赤ちゃんの下着って、なんであんなにかわいいんだろ。きっとお漏らしで泣いちゃう子を慰めるための特権なのかも。
(うさぎさんのオムツ、やっぱかわいいっ……)
 かわいらしいオムツを当てられた結音のおまたは、オムツで飾られて一層愛らしさを増している。
 だから、わたしも、ついぼーっと見とれてしまった。
 ――お母さんがこちらを振り向いたのを気付かないくらいに。
「あら、香奈音。帰ってきてたの?」
「なっ、今更なんだけどっ! ちゃんと『ただいま』って言ったじゃん!」
「あら、気付かなかったみたい。声かけてくれればよかったのに」
 あまりに無神経な態度に思わずムッとしてしまう。まるでしつこく声をかけなかったわたしが悪いみたいな言い方だ。
 もやもやした気持ちが、余計に強くなってしまう。いやだ、こんなの。なんでこんな思いしなくちゃいけないんだろ。
「知らないよ、そんなの」
 そっぽを向いて二階の自分の部屋へ、階段を駆け上ろうとするわたしの背中に届いた声は。
「ちょっと、香奈音! 結音ちゃんのオムツ、買ってきて欲しいんだけど――」
 結音のことしか見えない、お母さんの勝手なお願い。
 そんなの、わたしが知るわけないじゃん……。
(結音、結音、結音って! わたしのこと、気付きもしなかったくせに!)
 いやな気持ちが爆発する前に、わたしは自分の部屋に逃げ帰った。
(結音も、お母さんも――わたしも、きらい。赤ちゃんになんか振り回されてるなんて、そんなのやだ――)



 ――結局、わたしは結音のオムツのお使いには行かなかった。
 大体、いい歳した高校生に紙オムツを買わせようとする神経が分からない。
(誰かに見られたら……わっ、わたしがオムツ必要な子みたいじゃん! そんなの耐えられないって!)
 寝床に入って思うのは、余りに恥ずかしいシチュエーション。
 顔を真っ赤にしたわたしが、誰かに見られないようキョロキョロと周りを伺いながら、赤ちゃんのための下着――もこもこでふわふわな紙オムツの袋を手にして、レジへと向かう想像図だった。
 ……だめだ、想像するだけでも死ぬほど恥ずかしいし!
(オムツなんて……穿くわけないし……)
 恥ずかしさでオーバーヒートした思考回路は、勝手な連想を引き出してくる。
 脳裏を過ぎるのは、結音みたいにオムツ交換させられる自分自身の姿――。
『あら、香奈音ちゃんはお姉ちゃんだと思ってたのに、まだちっちのお漏らししちゃうのねぇ?』
『しない、しないもんっ……カナ、お姉ちゃんなのにっ……』
『うふふ、それじゃあなんで、オムツ穿いてるのかなぁ? くすくす……』
 まざまざと絵に浮かぶのは、スカートをまくり上げられた、オムツ姿のわたし。パンツ見せるのだって恥ずかしいのに、オムツだなんて!
(やだっ、変な妄想やだあ……! あうぅ、は、恥ずかしいぃ……結音じゃないのに、わたしっ)
 ただでさえ熱っぽい頭が、一気にボッと茹で上がってしまう。耳の先まで恥ずかしさで火照ってしまうのは、自分でも抑えられない癖だ。
 余りに幼稚な妄想のせいで、心臓までドクドクと高鳴ってゆく。こんなの、わたし……いつものわたしじゃ、絶対ない、のに……。
(オムツは……赤ちゃんのものだもん……)
 心を揺らす羞恥心に悶えながら、わたしは背けるようにぎゅっと目を閉じて、現実逃避するようにベッドの奥へと潜り込んだ。
(わたしは……カナは、赤ちゃんじゃないもん……オムツなんて……するわけない……)
 自分で自分に言い聞かせる――それ自体が幼稚な仕草だって――その時点でわたしは。

 もう、足を踏み入れていたのかも知れない。
 夢現の中に脳裏に過ぎったのは、あり得ないはずの妄想の世界。

(カナ、赤ちゃんじゃないもん……)

 逃げようとするあまりに繰り返した言葉は。
 わたしの世界を、わたしごと変えていってしまった。



 ――目覚めは、唐突に訪れた。頭の中はまだ眠気で重たいっていうのに。
 夢うつつのなかまで響いてきた声は、優しくなだめるお母さんの声。
「……ちゃん、いっぱいちー出たねぇ。うふふ、気持ち悪かったでしょう?」
(何……? 夢の中まで結音の世話してるの、お母さん……)
 半ば無理矢理に起こされたものだから、気分だって最悪だ。
 抗議の声をあげようと、口を開いた。
 『やめてよ、お母さん。わたしの部屋に来てまで、結音の世話なんて』
 そう言おうと、したのに。
「ひっくっ、ぐすっ……ふえええっ、うわああああんっ!」
 声に出来たのは、まるで火のついたように泣く赤ん坊の声。
(え……なんでわたし、泣いてるのっ!? 嘘、そんなのまるで――)
 赤ちゃんみたい。そう思った瞬間、血の気がさっと引いてしまった。背筋に走る寒気が、睡魔を一気に散らしてしまった。
「おー、よちよち、大丈夫よ、カナちゃん。ママがすぐにキレイキレイしてあげまちゅからねぇ」
(な、なにっ!? どういうこと、お母さんっ!? わたし、どうなってるのっ!?)
 眠たい目をごしごしこすり、瞳を開けば目の前にはお母さんの顔。わたしを見下ろして微笑んでいる。
 最近じゃ起こして貰うこともなくなったのに、どうして――そう、何度も問い直そうとしたのに。
「ふえええっ、うええええんっ、うああああああんっ!」
 やめてよお母さん、わたし、赤ちゃんなんかじゃないんだから――そう言おうとしたのに、出てくるのは幼い泣き声だけ。
 それも、本気の涙だった。何故だか分からないけど、心細くて、寂しくて、まるで母親を求める赤ちゃんに戻ってしまったみたいに。
(どうしてっ、なんでお母さんが部屋にいるの!? なんで……わかんない、怖い、怖いよおっ!)
 何一つ、今何が起きているのかさえも分からない。そんな恐怖に身をよじらせ、逃げだそうとした時だった。
 じゅくっ――ぐちゅっ――水溜まりに足を踏み入れた時のような、鈍い響きが聞こえて。
 下半身全体に、ぐずぐずに濡れた不快な感触が広がっていく。
(なにが、起きて……やだ、きもちわるいのっ、やだっ――!)
「ぐずっ、えぐっ、ひうっ、うえぇぇん……」
 じっとりと肌の上を這い回ってゆく生温い熱が、言いようのない不安感を更に煽る。
 涙に濡れた顔をごしごしと拭いて、起き上がろうと身体を起こしたわたしに、お母さんは優しく応えてくれた。
 ――信じられない言葉と共に。
「あらあら、おっきしちゃったのねえ。すぐにオムツ替えてあげるからねぇ」
 止まらなかった涙が、その一瞬だけ確かに止まった。
(――オム、ツ?)
 もうとっくに気付いていたのに――いや、目を背けていたかったのか。
 見下ろすお母さんの視線から逃げるように我が身を見下ろせば、そこにあったのは、信じられない自分の姿。
 ベッドの周りにはガラガラやおしゃぶり、赤ちゃんの為のアイテムが散らばっている。
 着ていたのは愛らしい薄いピンク色のロンパース。それも、股の間についていたボタンホックを外され、中身が丸見えになっている状態だ。
 そこから顔を覗かせていたのは――結音が穿いてたのとおんなじ下着。それも、真っ黄色に染まってパンパンに膨らんだ、使用済み。
 わたしが穿いていたのは、お漏らしでぐっしょりと濡れた紙オムツ――そう、理解した瞬間、止まっていた涙が再び溢れ出してしまった。
(うそ、うそだ……なんで、わたし……赤ちゃんじゃ、ないのに……!)
「ほーらカナちゃん、おしっこオムツもパンパンで気持ち悪かったでちょう? ママがキレイキレイしてあげまちゅからねぇ」
 お母さんの言葉は、昨日結音に言ったのと同じだったのに。
 なんでわたしに――そんな反論も、こらえきれず漏れ出た泣き声にかき消されてゆく。
「ひっ、ひぐっ、えぅぅ……ふええっ、ふああああんっ……!」
「うんうん、泣かない泣かない。カナちゃんはいい子だからねぇ」
 お母さんの慰めが、わたしの情けない気持ちを一層逆撫でしてしまう。
(わたし、赤ちゃんになってる……なんでっ、オムツにお漏らしなんて……やだっ、やだよおっ……!)
 心の中で叫んだ声は、一つも言葉になんて出来なかった。
 それどころか、身体はわたしの訴えをあざ笑うかのように、更に恥ずかしい仕打ちを浴びせてくる。
「ほら、オムツないなーい――あらあら! オムツ替え、気持ちよかったのかしら? うふふっ」
 くすくすと笑うお母さんは、わたしに当てるつもりだった新しいオムツを、そのままわたしの股に押し当ててきた。
 我慢、できなかったのだ。オムツを外された瞬間、緩みきった尿道を駆け下りるように、チョロチョロと膀胱に残っていたおしっこが流れ出してしまったからだ。
 16歳にもなって初めてのお漏らし……それもお母さんの見ている前で、オムツを汚しながらの失敗なんて。
(うそだ……こんなの夢だ! わたし、結音のお姉ちゃんなのに……赤ちゃんになるなんて……どうして、なんでぇっ……)
 涙に喘ぐばかりのわたしは、その答えを見つけることもできなくて。
「ふええええんっ……うああああん……」
 ただ、赤ちゃんみたいに泣きじゃくって、お母さんに見守られながらオムツを汚すことしか出来なかった。



 目覚めてもまだ、悪夢は続いていた。悪夢だと思いたかった。
「おはよう、カナちゃん。うふふ、ぐっすりお昼寝できたかしら?」
 ベビーベッドに寝かされたまま身動きも取れないわたしに、お母さんが声をかける。
 その扱いは、紛れもなく一人では何にも出来ない赤ちゃんに向けた態度だ。
 赤ちゃんじゃない――そう、何度言おうとしたか。けれど。
「えうっ……ひっくっ、ぐずっ、ふええぇん……」
「あらあら、若しかしてちーでたのかな? すぐにきれいきれいしましょうねぇ」
 想いに身体が追いつかない。下半身にまとわりついた、ぐずぐずに濡れた紙オムツの感触で、気持ちは一気に谷に沈む。
(こんなのって、ないよっ……お、大きくなって、おねしょなんてぇ……っ)
 ベッドの柵から横目で見つめた鏡には、16歳の身体を持った、赤ん坊の姿のわたしが映っている。
 まるでコスプレや赤ちゃんプレイだ――だけど、そんな違和感を誰も共有してはくれなかった。
 わたし自身、心の中では自分の年齢を忘れないようにしてきたつもりだ。けれど――
「ま、ママっ、チッチ、チーチナイナイなのっ、オムチュしなくていーのっ」
「あらあら、カナちゃんはおしゃべりさんねぇ。だいじょーぶ、ママが全部お世話してあげまちゅからねぇ」
 『お母さん、わたしお漏らしなんかしてないっ! だから、オムツなんかやめてよ!』――そう言ったつもりが。
 言葉に出来るのは幼児語だけ。ご飯はマンマ、眠るはネンネ――お漏らしは、チッチ。
(なんでっ、言葉もまともに話せないのっ! 身体はおっきいんだから、わたし……大人なんだからっ!)
 思い通りに行かない現実に、心の奥にふつふつと沸く不満も、この身体では抑えることすらできない。
「ひっくっ、ふええっ、ヤーなのぉっ! 赤ちゃん、ヤダぁっ! カナ、おねーたんなのーっ!」
「あらあら、夢でお姉ちゃんになったのかしら? そうね、カナちゃんもお姉ちゃんになりたいんだねぇ」
「ちがっ、ひっくっ、ちがうもんっ……ふええっ、うえええっ」
 いつからか、一つ不満なことにぶつかると、身体はすぐに泣き出しはじめてしまうようになった。
 そんな仕草も赤ちゃんの癖だとでも言うように、お母さんは気にせずわたしの着ていた服――股にボタンのついたロンパースだ――を脱がしにかかる。ぽちっ、ぽちっとボタンが開く音がしたかと思うと、足のあたりがすうっと涼しくなった。
 からんころん、と天井につり下げられたサークルメリーが可愛らしい音を立てる。赤ちゃんをあやす為の飾りは、わたしにとって最悪の仕掛けだった。
 『あなたはもう、赤ちゃんなんだよ』――まるでそんな風に何度もしつこく教えられているような気がしたから。
「うええええんっ! ふあああああんっ!」
「もうちょっと待っててねぇ。終わったらママのおっぱいが待ってるからねぇ」
 『赤ちゃんは泣くのが仕事』の言葉通り、わたしはもう、幼児語で喚くか泣きじゃくるか、それ位しか意思表示できなくなっていた。
 『自分は大人なんだ』って必死に主張してなきゃ、自分を保つことなんか出来そうになかった。
 だけど――身体は、残酷で。
「うわあ、いっぱいちっちでたねー。えらいえらい、カナちゃんは今日も元気でちゅねぇ」
「ふええっ、うぇえっ……」
 たっぷりと当てられた大きな紙オムツ――デザインまで赤ちゃん用のファンシーな代物だ――のせいでがに股になったわたしの下半身は、大人らしい働きをしてはくれなかった。
 両サイドのテープで留められた紙オムツの留め羽根を、一つずつ外されて。
 グッショリと黄色く染まった色を透かした、前当てを外された途端。
「あらあら、まあまあ! ちょっと待って! あらあら、ちー出ちゃったのねぇ」
「ひっぐっ、ひぐっ、ふぇっ、えっ、うぇえっ!」
 緩みきった尿道は、門番の役目を果たしてはくれなかった。尿意を感じた瞬間にお腹の奥に感じた衝動が一気に下ってゆく。
 眠ってる間に何度も栗化したおねしょでオムツかぶれ気味だったわたしの無毛の割れ目から、おしっこが泉のようにわき出してきたのだ。
 わたわたと慌てたお母さんは、開いたおねしょオムツの上から、新しいオムツをあててお漏らしを受け止めてくれていた。
 お母さんの手の中で、お漏らしなんて――死にたくなるほど恥ずかしい気持ちが、涙混じりの喘ぎ声を呼び起こしてしまう。
「よしよし、また新しいオムツに替えようねえ。カナちゃんはまだまだオムツがひつような赤ちゃんなんだから」
 そんなお母さんの声も、わたしには屈辱でしかなかった。
(どうして……わたしが、赤ちゃんになりたいって思ったからなの? だれか、教えてよお……)
 そんな、応える人のない想いが、胸に広がってゆく。
 わたしはもう――もとに、戻れないんだろうか――。



 赤ちゃんとして扱われた日々が、何日続いただろうか。眠ってはオムツを汚し、おっぱいを吸いながらお漏らししてはまた眠る。
 そんな夢現とも区別がつかなかった時間を過ごしてからしばらく経って、わたしは見知らぬ場所で眼を覚ました。
 パステルカラーの明るい壁に囲まれた、柔らかそうなマットの上には幼児向け玩具やぬいぐるみ。
 そこにいたのはわたしと同じ服を着た――わたしよりちっちゃな、赤ちゃんたちの世界だった。
「ほら、カナちゃん、怖がらなくて良いんだよ? ここにはお友達がいっぱいいますからねぇ」
 目の前では、エプロン姿のお姉さんが、わたしに優しく微笑んでいる。慣れないわたしを安心させようとしての行動なのだろうが。
「わ、わたちっ、おねーたんだもんっ。こわくなんてないもんっ!」
 わたしは立ち上がって、つたない足取りで一歩二歩――歩けたのはそれだけだった。あとは、バランスを崩して尻餅をぺたんとついてしまったから。
 かさり。ワンピースタイプのロンパースの、そのお尻の部分だけもこもこに膨らませていた紙オムツが、柔らかくつぶれてクッションになった。
 お漏らし防止ギャザーが太ももの周りをなでて、ふんわりとした生地が大事なおしっこの穴を守ってくれた感触が――わたしの焦りを加速させていく。
「あらあら、そっちは出られないんだよ? それよりお友達と遊びましょ?」
「や、やらっ……あかたん、ないもんっ。カナ……おねーたんだもんっ」
 二本も足がついているのに、今じゃまるで足かせのおもりみたいに自由が利かない。お陰でふらふらとあたまをゆらしながらよちよち歩くよりは、お尻をゆさゆさと揺らして進むハイハイの方が早い有様だ。
(こんな逃げ方、しなきゃならないなんて……)
 どうやらここまで連れてきたであろう、お母さんは部屋の出口で頭を下げて帰ろうとしている。
「よろしくおねがいしますね。保育園は初めてですから……」
(ほ、保育園っ!? わ、わたし、そんなとこ入れられるのやだよっ、お母さんっ!)
「ま、マァマ……帰っちゃヤダぁ……ママ、やだよおっ!」
 そんな情けない哀願も、大人の速度には届かなかった。
「ほーら、寂しい時はお友達と遊んで、元気とりもどそ? ねっ」
「きゃっ、や、やーあっ!」
 後ろから近づいてきたエプロンのお姉さんに抱きかかえられ、あっというまに赤ちゃんたちの世界に連れ戻されてしまう。
 手を伸ばしても届かない――そんな経験は、オムツを当てられてからずっと繰り返してきた事だった。

「わたちね、おひめさまにへんしんするんだよっ」
「ゆーもね、ゆーもおひめさまなるぅっ」
 きゃっきゃと嬌声をあげて虚構の世界に浸る幼女たちの群れは、年相応に愛らしい姿だった。
 ただ、そんな空間にわたし一人――背丈の大きな赤ん坊が混ざっているのは、自分でも堪えきれないほど滑稽で。
(は、恥ずかしいよおっ……こ、こんな赤ちゃんたちの集団に入って、赤ちゃんみたいになれないよおっ……)
 一人もじもじとして角に座り込んだわたしを、世話を焼く大人たちはほっといてはくれなかった。
「ほーら、カナちゃんも一緒にあそびましょ? カナちゃんはどんなお姫様がいいかなー?」
「か、カナはおひめさましないもんっ! おねえたんなの、おねえたんっ」
 逆らう仕草も幼いままで、何度修正しようとしても赤ちゃん言葉しか出てこない。
 不満も聞き届けられず、結局幼児たちの輪に放り込まれてしまう。
 その上、恥辱はそれだけに止まらない。
「カナちゃんはまだオムツなんだからおひめしゃまのあかちゃんね」
「や、カナはあかちゃんないモンっ……」
「わがままいっちゃめーでちゅよ、カナちゃん」
 自分より背丈の小さな幼女たちは、自分がわたしより上だと言わんばかりに立場を誇示してきた。
 もこもこのオムツを当てられたお尻をぽんぽんと叩いたり、挙げ句には自分の穿いていたアニメプリントのパンツまで見せびらかしたりする有様だ。
(な、なにしてんのっ、この子たちっ! これだから、ちっちゃい子は……)
 一人きりで自分の心を必死に守ってきたわたしにとって、彼女たちの幼い仕草はある意味で救いだった。
 だって、わたしはそんな恥ずかしいこと、したことないから。
 それが、自分が赤ちゃんでないって証拠だと思ってたから。
 でも――
「もー、カナちゃん、いうこときかないこはおしおきなんだよ!」
「ひゃうっ!?」
 ちっちゃな女の子二人がかりで捕まえられても、逃げられなくなる。
 手足をばたつかせて逃げようと思っても、どうしようもできなくて。
「カナちゃんがいいこになるまで、おしりぺんぺんしますっ!」
「やっ、そんなの――――いひゃあっ!?」
 それは、オムツ越しに受けた鈍い衝撃だった、けど。
 まるで火のついたように痛みが走った。
「えう……や、やらぁ……」
「もういっかいっ!」
 ぽふん、ぱしんっ――間抜けな音を響かせて、幼女たちが見よう見まねのしつけを下していく。
 たわいない仕草に反して強烈な一撃に驚いていられたのは最初だけ。
 痛みは、わたしに底知れない恐怖を与えてしまっていた。
「や、だよぉっ、ひぐっ、お、おねーたん、やめてよおぉ……」
「いーこになるまでおしおきなんだよ」
「そうだそうだっ」
 痛みで神経まで痺れてゆく。恐怖が涙を誘ってゆく。
(どうして、こんな――)
 答えのない苦悶に、こころはもう限界だった。
 理不尽が、天から振ってきたかのような叱責で断ち切られても。
「こらっ! カナちゃんをいじめちゃダメでしょ!」
「だって、せんせいっ! カナちゃんがね――」
 幼女たちの手からわたしをふりほどいたのは、さっきわたしを部屋に戻した、エプロン姿の先生だった。
 ぎゅって抱きしめられた瞬間、安堵が心の中に広がってゆく。
「せ、せんせぇ……カナね、カナ……ぐすっ、ひくっ」
「大丈夫、カナちゃんもちゃんとお姉ちゃんになれるから。そんなに焦らなくて良いんだよ」
「せん、せえっ……!」
 同時に、オムツの中が、じわっと暖かくなってゆく。
 それは初めての経験。
 心からの安堵と共に訪れた、開放感に満ちたお漏らしだった。
 じゅわああっとオムツに広がっていくおしっこの熱を感じながら、わたしは先生の胸に顔を寄せて埋もれてゆく。
(あぁ……こーいうのが、羨ましかったんだ……結音になりたかったのって、きっと、これだったんだ……)
「カナちゃん、またおもらちかな? うふふ、じゃあおむちゅ替えましょうかねぇ」
 先生のだっこが、気持ち良すぎて。
 わたしは、もう――涙を流すことなく、頷くことができた。
「うん……オムツ、かえてぇ……」
 暖かさが、まるで世界全てを包み込んでゆくような感覚――

 ――それが、夢の終わりだった。



「あ、あれ……わたし、眠りながら、泣いてたのかな……」
 気がつけば、もとのわたしの部屋。服だって学校の制服だし、サークルメリーもベビーベッドもない。
 いつものベッドで目が覚めたわたしは、いつもと違う熱を感じていた。
「もしかして――あっ」
 それは、穿いた覚えのない下着。
 結音と同じデザインの紙オムツが――おねしょでパンパンに膨らんでいた。
「なんで――ってか、わ、わたしっ、おねしょしちゃってる……!」
 かああっ、と顔が火照ってしまう。どうしよう、そんな歳じゃないのに。
 そんな心配をしようとしたはずが。
 ――さっきまで見ていた夢に、邪魔されてしまった。
「……赤ちゃんに、なってたし」
 自分の意思に反して赤ちゃんとして扱われた恥ずかしさも、最後は優しく抱き留められた感触で、幸せを感じることが出来た。
 不思議な夢のお陰で、自分の本当の願いが分かった気がする。
 そんな気持ちが……わたしの心を、決めてしまった。

 濡れたオムツを脱ぎ、一人でパンツに着替えたら。
 わたしは、結音の世話を見ていたお母さんのいるリビングに向かっていった。
 わたしの、本当の願いを伝えるために。

 おねしょで濡れたオムツを、後ろに隠して。
「あのね、お母さん……」
 また、赤ちゃんになりたいって――。

thanks to シンゴさん
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